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  第二王子トラヴィヌスは、今目の前にしている事が全くもって理解できなかった。
 遠く離れた王宮から護衛兵数名を引き連れ、馬に鞭入れ全力疾走してきたばかりで
ある。苦しげに体を揺らす愛馬の上、自らも喘ぐような息づかいを繰り返しながら、それ
でも眼前の光景から目を離すことはできなかった。
(……どういう事だ?)
 乱れ、戸惑いを乗せて吐き出される荒い息が、《貧民街》特有の濁った空気に混じり、
解(ほど)け飛んでいく。
 数時間前には考えもしなかった状況が、目の前にあった。
 まるで屍のように累々と地面に転がる、紫紺のマントを纏った男たち。何とも黒々とし
たその中で、陽光に照らし出され、一際目を引く輝きを放つ、蜂蜜色の頭が見えてい
た。
 その小さな体は、余りにも無造作に地面に投げ出されていた。ひょろりと細く、幼い程
に見える背中が、小さく丸くなるように、そして縮こまるようになって、倒れ 伏している。
 最初は誰か別の、見知らぬ《貧民街》の子供なのだと思った。
 アリデラの街壁界隈に広がる《貧民街》では、当局でも把握できぬ数の民が生活して
いると聞く。中には、弟と似通った背格好で、まったく同じ髪色の子供がいてもおかしく
はない。
 しかし、こちらに向けられた背中をすっぽりと覆う象牙色のマントが、その可能性の全
てを否定していた。
 僅かに土を被りながらも、なお陽光の下で確かな光を放つマントの留め具。そこに刻
み込まれた精巧な竜の紋章が、他の何よりもその持ち主の身元を明らかにする。
 駆け上がる衝撃に、脳髄が軋み、揺れた。
 ナシルか――あれは、ナシルなのか!
「どうしたのだ! 何があったのだ!?」
 動かぬ小さな背中の傍らに、よく知る一人の青年の姿があった。トラヴィヌスは逸る思
いで愛馬から飛び降りると、その人影に向け声を上げる。紺色の軍服を整然と着こなし
たその青年は、弟の側にあって、誰よりも信頼に足る男だった。
 勢いよく土を蹴立て駆け寄りかけたトラヴィヌスは、しかし、不意にその急き立つ足を
止めた。
 突如として、違和感が頭を過ぎったのだ。
 弟が傷つき挫けることがあれば、誰よりも先に手を差し伸べるはずの男が、なぜあの
ように自分の仕事も果たさず突っ立っているのか。血相を変え死に物狂いで弟の身を
守ろうとするはずの男が、なぜあのようにじっと動かずにいるのか。
 青年はこちらに横顔を向けたまま、雲の兆し始めた上空を眺め、たたずみ続けてい
る。
「シドッグ……?」
 喉をついて漏れ出した声は、ひどく掠れていた。
 何だろう、この訳の分からぬ不気味な予感は。ひたひたと、まるで懐疑の足音が忍び
寄ってくるかのよう。
 鼓動が速まるのが分かった。徐々に徐々に、だが確実に速度を増してゆく。
 そして――不意に、青年がゆっくりとこちらを振り返った。
「……ああ、貴方でしたか、トラヴィヌス殿下」
 耳に届いたのは、慣れ親しんだはずの低い声音。しかしそれは、見知らぬ誰かのもの
と錯覚してしまう程に、一切の感情が抜け落ちていた。
 だがそれ以上にトラヴィヌスの言葉を失わせたのは、吸い込まれそうな程に深く静か
な、その眼差しだった。
 冥く、底の無い深淵のような。見つめていれば、抜け出す事叶わぬ暗い水中に引きず
り込まれてしまいそうな、蠢く何かを秘めた翠色の双眸。
 トラヴィヌスは気圧されていた。周りの景色までが、一気に立ち竦んだように見える。
「シドッグお前、何が……何を、して」
 無意識に溢れ出した声ははかなく、言葉は意味を持たない。
 自分でも、何を問いたいのか分からなかった。何が知りたいのか、何が聞きたいの
か。溢れる程にあるはずなのに、そのどれもが形となって現れて来ない。
 混乱と焦燥と。ぐちゃぐちゃに乱れきった思考に息を詰まらせたトラヴィヌスの元に、
ふと、低く整えられた声が届いた。
「そう心配なさらずとも、生かしてありますよ」
 声の主は、せりふの内容とは裏腹に、やはり表情を動かさない。
 トラヴィヌスは眉をひそめた。「生かしてある」? それは求めていた答えとは、まるで
かけ離れていた。
 聞きたかったのは、一体ここで何が起こったのかという事だ。どうしてナシルがこんな
目に遭っているのかという事だ。方々に転がっている《フィンデガルデ》たちは、ジオは。
そしてシドッグ、お前は。
 しばらくして、トラヴィヌスははっと顔を上げた。
 分かったのだ、「生かしてある」という、その言い回しに含まれた乱暴な意味が。その
短い言葉が抱え持った、尊大過ぎる響きが。
「何……だと?」
 時が止まった。今、この男は何を言った。一体、何を言った?
 理解できない。頭がうまく働かない。混乱を極めた感覚が、思考を拒絶している。
 呆然としたこちらを気にする様子なく、青年は、抜き身の剣を握っていた手を軽く振っ
た。剣先から払われ、地面を濡らした鮮やかな赤色に、トラヴィヌスは背筋を凍らせる。
 先刻まではシドッグが陰となって目に入らなかったその向こうに、倒れ伏すジオの姿が
見えていた。切り裂かれた軍服は赤黒く染まり、剥き出しの手が、足が、青ざめた横顔
が、どろりとした鮮血に浸かっている。それは、弟の横で、いつも羨ましくなる程に余裕
綽々としている様からは、まるで想像だに出来ない姿で。
 一体誰が、彼を、彼らを、こんな風に?
 ――否、答えは既に、出されていたではないか……!
 瞬間、目の前が赤々として、そして白くなって。
 爆発的に膨れ上がった激情に、気付けばトラヴィヌスは、周囲の護衛兵たちに羽交い
締めにされていた。
「放せ! こいつはナシルを! ジオを、その手に掛けたのだぞ!」
 駆け出そうとしていた足は、宙に浮き上がってもがき暴れる。
「ナシルはお前の、お前が忠義を尽くすべき主君ではないのか! ジオはお前の同僚
で、友人ではないのか!?」
 叫んだ。声が嗄れる程に。張り裂ける程に、強く。
「言え! 何故だ、何故このような事を!」
 一向に自由にならない全身の力を、ただ声だけに込めて。
「――ハ」
 突き動かすような風とともに、眼前の青年の口から、一つ吐息が漏れた。
 そして一瞬後、青年の顔は見る間に豹変を遂げる。その口元を鮮やかに彩ったの
は、嘲笑だった。翠色の双眸は狂気を映し、凄絶なまでに煌めいて。
 耳に届いたのは、哄笑に似ていた。人を侮蔑して余りある、そんな笑い方に似てい
た。音高く弾けながら、低く潜むように蠢きながら、その笑声は世界を愚弄し、嘲罵す
る。
「何がおかしい!」
 怒りは叫声となって、宙に爆ぜた。
 途端にぴたりと止む、不快な笑い声。
「おかしいですよ。貴方のおっしゃった事そのものが、ね」
 そう言って、再び青年は口元に笑みを食(は)む。
 瞬間。思慮が、理性が、分別が、あまねくすべての抑制心が、粉々に吹き飛んだ。
「貴様ァ……っ!!」
 あの笑みを、あの顔を、あの男そのものを。打ち崩し、叩き破り、その身朽ちるまで砕
き割る!
 昂ぶり逆巻き、脳髄に殺到する衝動は、もはや憤怒の形すら留めてはいなかった。喩
えるならそれは、そう――燃え上がるような、憎悪。
 護衛兵の腕に捕らえられていなければ、この身は確実に、後先なく猛進する疾風と化
していただろう。この手は剣を引き抜き、目の前の敵を噛み砕かんとする牙へと変じて
いただろう!
 ここまで、こんなにまで憎悪を感じた事は、今までにない。
「シドッグさー、それ、色々と説明はしょり過ぎ」
 出し抜けに、場違いなほど緊張感に欠けた声が、振り落ちてきた。
 虚を衝かれ、思わず身構えたトラヴィヌスの視線の先、いつの間にそこにいたのだろ
う、シドッグの背後から姿を現したのは、簡素な衣服を身に着けた小柄な若者だった。
 襟足の所で細く結ばれた焦げ茶色の髪よりも、また、その細身の体躯よりも先に目に
付いたのは、王都ではめったに見かける事のない、夕焼け空のような淡紅色の双眸。
(……《赤目》?)
 トラヴィヌスは、先刻までの猛り狂うような激情も忘れ、大きく息を呑んだ。幾度目を凝
らしてみても、その見知らぬ若者の瞳を染める色は、変わることはない。
 赤い瞳――すなわち、《赤目》。それは、古代からこの王国に巣食う、不治の病を指し
た。
 ラディンス王国の民が生まれながらに具える瞳の色は、青か緑に限られる。そういっ
た中で、稀にだが、後天的に瞳が赤く染まる者もいた。建国当初からあったとされる奇
病だが、その症状も原因も、未だ何一つ解明されてはいない。
「サルト、起きたか」
「あのまま寝ててもよかったんだけどねー」
 眼前で親しげに交わされる会話の傍ら、周りを囲む護衛兵たちのさざめきが、次々に
耳に届く。
「《赤目》だ……何でこんな所に」
「馬鹿言え。ここは《貧民街》だ、そういう事もある……」
 そう、《赤目》と呼ばれる病に関して、分かっている事が一つだけある。
 それは、高貴な出自の人間は、まず罹(かか)る恐れがないということ。根拠の不確か
な、しかしそれは厳然たる事実だった。
 すべての学問は、等しく万人の為にある訳ではない。学究の担い手は貴族や聖職者
といった特権階級、つまりその目的意識は、常に高貴なる者の安寧の為だけに費やさ
れる。下層民のみが発症する病となれば、彼らがそれを研究する動機は、何一つあり
はしないのだ。
 《赤目》――それは貧民の象徴。赤い瞳を持つ者を蔑視する風習は、今なお貴族社会
に根強く存在し続けている。
 護衛兵たちがひそひそと繰り返す雑言が、届かぬ遠さではない。しかし《赤目》の青年
は、それを歯牙にもかける様子なく、真正面からトラヴィヌスの目を見返してきた。
 自信に満ちた双眸だった。王族の一員たる自分に、一片の卑屈さも見せはしない。武
人と判断するには少々細身に過ぎるが、そこらの平民とは明らかに雰囲気が違う。
(何者だ……?)
 訝しげに見つめる視線に気付いたのだろう。相手はにっこりと、何処か含みのある笑
顔を作った。
「ええっと、『お初にお目にかかります』って言えばいいのかなー、こういう時は。こんにち
は、王子様。弟君が心配になって、見に来ちゃったのかな?」
 軽快な口ぶりで、慣れない敬語は使うもんじゃないね、と付け加える《赤目》の青年。
 問い掛けとも独り言ともとれる言葉に、トラヴィヌスはただ目を細め、口をつぐんだ。
 愚問だ。普段王宮から出ることのない自分がこんな所に駆け付ける理由など、それ以
外にある訳がない。
 義兄シャルドゴールの動静を監視する役目を言いつけていた者から、不穏な動きがあ
るとの報告を受けたのが、半刻前のこと。「《フィンデガルデ》の一団が出動、その行く手
にナシラウス殿下の乗った馬車あり」。続いて入って来たその情報に、居ても立っても居
られなくなって、王宮を飛び出してきたのだ。
「まず名乗りを上げるのが先かな。僕は、サルト=ウィシュリー。王都一番の貸し馬車屋
に雇われの身だった。ついさっきまでは、ね」
 妙な名乗り方だった。説明的というか、わざとらしい言い回しというべきか。裏に何か
思惑を孕んでいるような、そんな不可解さがある。
「『かくしてその実体は』ってヤツさ。僕らはこういうのが得意でね、作戦の中でよく使うん
だ。渦中の相手には、もしかしたら『裏切り』に見える事もあるだろうね」
 何故だろう、どうしてなのだろう。サルトと名乗った《赤目》の若者の言葉はまるで理解
できないのに、頭の何処かで、警鐘が乱打され始めている。
「ふふ、ふ。有り体に言うとね、王子様」
 場にそぐわない、緊張感に欠けた笑い声が立った。表情を固くしたトラヴィヌスの元
へ、軽く――余りにも軽く、その事実は、まるで歌でも歌うようにもたらされる。
「シドッグは僕らと同じ、《フィンデガルデ》なんだよ」
 一陣、湿りを含んだ風が、唸るように傍らを吹き抜けた。
「な……んだって」
 呆然と。愕然と。
 その言葉は、僅かに、ほんの僅かに胸の中に残っていた希望という名の細糸を、無惨
に引き千切るものだった。必死の思いを踏み潰し、ただ冷酷に現実を突き付けるものだ
った。
 馬鹿な、と呻くように繰り返す己の喉。どうしようもなく震える。全身が、震える。
 《フィンデガルデ》。それは王国軍の中核を占める、至高の集団の名であった。一昔前
であれば、王国に住まう民は皆、その名を誇らしげに語っていただろう。ひとたび戦わ
せれば、眼前に立ち残る者なし。いかなる叛乱や侵略を前にしても、常に目覚ましい勝
利を挙げてきたのだ。
 だが、時代は変わり果てた。
 義兄の蛮行は、正にこの精鋭集団の手によって民衆に加えられていると聞く。本来王
族全員に忠誠を誓うはずの彼らは、今や自分にとって、王国最強の武力を振り翳す最
悪の害敵と化していた。
 視線は、気付けば縋るように、話題の中心となった青年の姿を探していた。
 彼こそが最後の砦だ。彼さえ否定してくれれば、糸は繋がる。自分や弟と、彼とをつな
ぐ糸は、そのまま切れる事はない。
 しかし青年は――シドッグは、気がなさそうに何処か遠くを眺めているだけだった。サ
ルトの言葉を否定するでもなく、肯定するでもなく。否、興味なさげに、今目の前で起き
ている事などどうでもいいとでも言うかのように、ふわぁと一つ、あくびをした。
「……シドーッグ!!」
 その名を叫んだ後は、もう、声にはならなかった。
 呆然と立ち尽くし、縛めの役目を果たさなくなった護衛兵たちを振り払い、地を蹴っ
た。腰から剣を抜き放ち、目はその男のみを捉え。憎悪を、再び膨れ上がった憎悪を、
一直線にその男に向ける!
 しかし。
「話の途中だよー、王子様。最後まで聞いてほしいな」
 懐に何かが入り込んで来た――そう気付いた時には、鳩尾に衝撃を受け、足が宙に
浮かび上がっていた。手から離れた剣が地面に転がり、からんと乾いた音を立てる。そ
して無様に地に転ぶ瞬間、眼下に見えたのは、離れた位置にいたはずのサルトの足だ
った。
「《赤目》が……!」
「殿下に何を!」
 背後から殺到してくる靴音が聞こえる。地に転がり、腹部に走る痛みをそのまま咳き
込むように吐き出しながら、トラヴィヌスは涙の滲む目でそれを振り仰いだ。
 遅い。余りにも、遅い。その反応の差は、その力量の差は、歴然だ。
 事実、サルトによる第二撃が護衛兵たちを――否、その手を下したのはサルトではな
かった。宙を舞った巨大な黒い影が幾つか、彼らの行く手を遮るように、次々に大地に
激突する。
 朦々と、砂埃が舞い上がった。突然の出来事に身を緊張させたのも束の間、相変わ
らず場違いに明るい声が、頭の上から落ちてくる。
「あーあー、何してんの、シドッグ。あいつらとは一応、今回の作戦では協力する手筈に
なってたんだけど?」
「知らないな。事前に『手出しするな』と言っておきながら、教育係一人にやられるような
連中だ。むしろ足手まといになる」
 土煙が薄れ、次第に晴れ始めた視界の中、硬直し立ち尽くした護衛兵たちの足元に
転がっていたのは、あろうことか、先刻までシドッグの傍らに横たわっていたはずの《フィ
ンデガルデ》の兵士たちだった。
 転がる中に、ナシルとジオの姿はない。その事に安堵しつつも、トラヴィヌスは襲い来
た戦慄を隠せなかった。
 倒れていた《フィンデガルデ》の兵士たちは、確か全部で九人だった。少し目を離した
とはいえ、瞬く間にその全員を、重量のある漆黒の甲冑を身に着けた全員を、意図した
場所に正確に投げ飛ばしてくるとは。
(どんな力だ……)
 シドッグの、その戦士としての能力の高さは、知っているつもりだった。しかし、実際に
見て知った、弟から聞いて知った、そこから立てた想像の、遥か上を行く。
 勝てないと、その事だけが明確に分かった。自分と護衛兵たちでは、この男一人にす
ら敵いはしない。
「でもさー、ジオ=フォードと王子様を連行する任務に就いてんのは、あいつらなんだ
よ?」
「それなら逆にちょうどいい。今ので、さすがに目が覚めるだろ?」
 気安い様子でサルトと言葉を交わすシドッグは、息一つ乱していない。
(……『連行』?)
 トラヴィヌスは、サルトの口から飛び出た単語に、引っかかりを覚えた。
 問い掛けようと身を乗り出そうとして、また、膝から崩れ落ちる。まるで腰が抜けたよう
に、力が入らなかった。
「当分立てないよ、王子様。しばらく、大人しくそこに座っているといい」
 体術か魔法か、何かされたのだろうか。真上から淡々と告げてきたサルトのせりふか
らは、何も伝わって来ない。
「僕のやった事は一応不敬罪に相当するんだけど、出来れば目をつぶってほしいな。あ
のままシドッグに斬りかかってたり弟君を助けたりしてたら、『反逆幇助罪』を問われて
た。アナタまで《裁判》にかかりたくはないでしょ?」
「な……に?」
 耳に届いたのは、まったくもって馴染みのない、殺伐とした言葉の羅列。
 しかし何か、ナシルに関する事を言われたのだと分かった。「連行」につながる事実
を、示しているのだと分かった。
 けれどそれは、今までの日常からは余りに縁遠い言葉で。
「反逆……幇助、だと?」
 咎めるように細めた視線の先で、サルトとシドッグは静かに地を蹴り、こちらに向かっ
て歩き始めていた。
 真横を通り抜けたその背を追って後ろを振り返ったトラヴィヌスは、先刻まで倒れ伏し
ていた《フィンデガルデ》の兵士たちが、ゆっくりと体を起こし始めているのに気が付く。
「うん、反逆幇助。でも、僕らもその辺はあんまり詳しくないんだ。知りたいなら、こいつら
に聞くといい」
 サルトは背中だけでそう答えて、負った傷を庇うようにして身を起こした九人の男たち
と、向かい合う。
 どういう意味だ、と重ねて問い掛けようとしたトラヴィヌスは、しかしその言葉を口にす
る事は出来なかった。
 場の空気が、一変していたのだ。





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*Illust by (C) ryoubou.org 2008*