我らを知らぬ者の為に、一つ、話をしておこうか。

我ら天狗は、人の死した後の姿である。
しかし、生前善人であった者のみが歩む、仏や菩薩の道とは異なる。
畜生にも餓鬼にもなれず、また修羅道にも地獄にも見放され、
永久に抜け出す事叶わぬ煩悩と魔羅の巣食う、極めて暗澹とした世界に棲まう。

生前の過ちから苦難の道を辿る我らを、何とかして救いたいと思うてか、はたまた更に陥れようと思うてか。
天狗道に落ちた者に、菩薩が科した処断が一つ。

それは、時に絶大な力をもって弱きを屈する悪しき者どもを、懲らしめねばならぬという責務。
その務めを果たしていれば、いつか元の輪廻に戻れるのだと確約された訳でもないのに、
我らはその口約に踊らされ、今日も今日とて住み処とする深山を離 れ、悪人退治にと人里へ下りるのだ。


------>  序幕 「月の下にて」

------>  第一幕 「形見こそ今は仇なれ」









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